こんにちは。沖縄で音楽の仕事をしながら、教育や心理学を独学しているサルネです。
今日は、「教える」よりも「聴く」ことの方が、子どもの学びや成長を深めるというテーマについてお話ししたいと思います。
「教えること」が先行しすぎる現代の教育
私たちは長いあいだ、「教えること=教育」だと信じてきました。
学校でも家庭でも、どうしても「伝える」「説明する」「正す」という“教える側の努力”に意識が向きがちです。
しかし心理学の観点から見ると、人が学ぶ力を引き出すのは「教えること」ではなく「聴くこと」だと言えます。
人は教えられて変わるのではなく、聴かれて変わるのです。
聴くことが“自己効力感”を育てる
子どもが新しいことに挑戦するとき、最も大切なのは「自分にはできる」という感覚。
心理学ではこれを「自己効力感(Self-Efficacy)」と呼びます。
実は、この自己効力感は“誰かに認められ、聴いてもらう”経験によって育ちます。
たとえば、こんな会話を思い浮かべてください。
ピアノ、もうやりたくない
なんで?せっかく続けてきたのに!
よくあるやり取りですよね。
でもこのとき、子どもは「理由を聞いてもらえなかった」と感じ、気持ちを閉ざしてしまうことがあります。
一方で、こう聴いてみるとどうでしょう。
そっか、やりたくないんだね。何かあったの?
たった一言で、子どもの心が開くことがあります。
この「安心して話せる場」が、子どもの内側に「自分の意見を持っていい」「考えていい」という信頼を生み出すのです。
それが、学びの意欲の土台になります。
聴くスキルは“技術”であり、訓練できる
「聴く」と言っても、ただ黙って相手の話を聞くことではありません。
心理学的には、「傾聴(アクティブ・リスニング)」という技術があります。
以下の3つを意識するだけで、会話の質がぐっと変わります。
① 繰り返す(リフレクション)
相手の言葉をそのまま繰り返したり、少し言い換えたりします。
明日のテストいやだなぁ
テストがいやなんだね。何か不安なの?
これによって、子どもは「理解してもらえた」と感じ、さらに深く話すようになります。
②感情を言葉にする(感情のラベリング)
「悔しかったんだね」
「うまくいかなくてモヤモヤしてるんだね」
相手の感情を言語化して返すことで、本人が自分の気持ちを整理しやすくなります。
これは心理カウンセリングでもよく使われる手法です。
③ 評価しない(ジャッジを保留する)
聴くときに「良い・悪い」「正しい・間違ってる」を挟まないこと。
これが最も難しく、最も大切です。
子どもが失敗したときに、
「どうしてそんなことしたの?」
ではなく、
「そのとき、どんな気持ちだった?」
と聴けるかどうか。
この一言の違いが、学びの方向を180度変えます。
聴く力は“大人の学び直し”にも通じる
興味深いのは、この「聴く力」は教育現場だけでなく、大人の学び直しや仕事の成長にも直結するということです。
たとえば、部下とのコミュニケーション、顧客との関係、パートナーシップ…。
どんな場面でも、「聴く力がある人」ほど信頼され、影響力を持つのです。
実際、さまざまな優良企業における調査では、“優れたチーム”の共通点は「心理的安全性」だと報告されていることも、しばしば耳にしますよね。
その心理的安全性を作る最大の要素が、「相手の話をよく聴く文化」だったのです。
つまり、“聴く”というスキルは、教育・ビジネス・人間関係のすべてに共通する“土台の力”なのです。
今日からできる「聴く練習」
ここまで読んで、「聴くことの大切さはわかったけど、実際どうやって身につければ?」と思われた方もいるかもしれません。
そこで、今日からできる小さな練習を3つ紹介します。
- 相手の話を最後まで遮らず聴く
→ 話を途中でまとめず、5秒待つ習慣を。 - “質問”ではなく“感想”で返す
→ 「そう感じたんだね」「なるほど、そう思ったんだ」など共感ベースで。 - 相手の言葉をメモする
→ 聴く姿勢が自然と深まり、相手への関心が伝わります。
この3つを繰り返すだけでも、人間関係が驚くほどスムーズになります。
教育の本質は「伝えること」ではなく「受け取ること」
私が音楽を教えるときにも感じますが、
本当に人が伸びる瞬間というのは、“理解された”と感じたときです。
それは、教えたことがうまく伝わった瞬間ではなく、
相手が「自分の中に答えを見つけた」瞬間なのです。
教育とは、情報を押し込むことではなく、心を開くこと。
そしてその鍵は、“聴く”ことにあります。
まとめ「聴く」から始まる新しい教育
- 聴くことは、子どもの自己効力感を育てる
- 聴く力は、心理的安全性をつくる
- 聴くスキルは、誰でも練習で身につけられる
- 教育の本質は、「理解される経験」を積むことにある
子どもを、部下を、そして自分自身を成長させたいなら、
「何を教えるか」よりも「どう聴くか」を意識すること。
それが、学びを深める最初の一歩だと思うのです。
あとがき
沖縄の海を眺めながら、生徒の話をゆっくり聴く時間があります。
すると、答えはいつも彼らの中にあることに気づきます。
私ができるのは、それを「引き出す」ことだけ。
教育も、音楽も、そして人生も、
きっと“聴く”ことから始まるのかもしれませんね。



