暮らしと文化

沖縄の「てぃーだ時間」が教えてくれた、ゆるやかに生きる知恵

はじめに:時間に追われる私たちへ

朝、アラームの音に急かされて目を覚まし、
スマホの通知に追われ、
仕事と家事のあいだを行き来する。

気づけば一日があっという間に終わっている――
そんな毎日を過ごしている人は多いのではないでしょうか。

私も以前はそうでした。
「もっと早く、もっと効率的に」と焦るうちに、
心がどこか置き去りになっていくような感覚がありました。

そんな私が救われたのが、沖縄で出会った「てぃーだ時間」という考え方です。

“てぃーだ”とは沖縄の方言で「太陽」。
そして「てぃーだ時間」とは、太陽のようにおおらかで、
自然のリズムに寄り添った“ゆるやかな時間の流れ”を指します。

沖縄の人々の暮らしに息づくこの感覚は、
私たち現代人が忘れかけている「時間との付き合い方」を思い出させてくれるものでした。

沖縄の「てぃーだ時間」とは何か

沖縄で暮らし始めたころ、私はよく驚かされました。
約束の時間に少し遅れても、誰も眉をひそめない。
お店の開店時間も「だいたいこのくらい」。
バスの発車も、予定通りとは限らない。
これらは「うちな〜(沖縄)タイム」という場合もありますが笑。

本土の感覚では「ゆるい」と映るかもしれません。
でも、その“ゆるさ”の裏には、人と自然に対する深い尊敬と受容があります。

沖縄では、太陽が昇り、海風が吹き、雨が降り、
その日の天気や体調に合わせて動くことが、
「自然に生きる」ということ。

つまり「てぃーだ時間」とは、
自然の流れに身を委ねながら、無理のないテンポで生きる知恵なのです。

私が「てぃーだ時間」に出会った瞬間

ある夏の日、那覇の市場近くで出会ったおばぁ(おばあさん)の言葉を今でも覚えています。

市場のベンチで休んでいる私に、
おばぁは冷たいさんぴん茶を差し出しながらこう言いました。

沖縄のおばぁ

太陽はね、急がんでもまた昇るさ。

その言葉に、胸がじんわり温かくなりました。
急ぐことが正義のように思っていた私の中で、
“ゆっくりでいい”という許しが生まれた瞬間でした。

それから私は、朝の散歩で海を眺める時間を持つようになりました。
波の音に耳を傾け、潮風を感じるだけで、
一日のリズムが整っていくのがわかります。

沖縄では、自然とともに生きることが
そのまま「心を整える習慣」になっているのです。

なぜ私たちは「急ぎすぎてしまう」のか?

現代社会では、“効率化”や“生産性”という言葉があふれています。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
けれど、効率を追い求めるあまり、
「余白」や「ゆとり」を削ってしまうことがあります。

教育の現場でも、仕事の現場でも、
“成果”を急ぐ風潮が強まるほど、
私たちは“プロセスを味わう力”を失っていきます。

心理学では、人が幸福を感じるとき、
「時間的ゆとり(temporal autonomy)」が大きな影響を持つことがわかっています。

つまり、自分で時間の流れを選べることこそ、
心の健康と創造性を支える大切な要素なのです。

「てぃーだ時間」を暮らしに取り入れる3つのヒント

ここからは、忙しい日常の中でもすぐに実践できる
“てぃーだ時間的な生き方”のヒントを紹介します。

① 「急がない日」をつくる

一週間に一度でいいので、「予定を入れない日」を設けてみましょう。
スマホの通知をオフにして、自然の光の中で過ごす時間を意識的に持つ。
散歩や読書、昼寝――何をしても、何もしなくてもいい日。

沖縄では「なんくるないさ(なんとかなるさ)」という言葉がよく使われます。
この言葉は、“投げやり”ではなく、“信頼”の表現です。

時間も人生も、少し委ねてみると、思わぬ発見が生まれます。

② 「人との時間」を優先する

沖縄では、時間より“人”が大切にされます。
誰かが困っていれば、予定を変えてでも手を差し伸べる。
それが自然に行われている文化です。

私もこの土地で学びました。
「今この人と過ごす時間」が、どんな仕事よりも価値のある瞬間だということ。

忙しい社会人ほど、
“予定より人”を優先することで、
人間関係も自分自身の心も豊かになっていきます。

③ 「太陽のリズム」で一日を整える

朝の光を浴び、昼に動き、夜はしっかり休む。
それが「てぃーだ時間」の基本です。

現代では、夜型の生活や人工光によって、
体内時計が乱れやすくなっています。
でも、太陽とともに生活リズムを整えるだけで、
睡眠の質や集中力、気分の安定にも効果があることが
多くの研究で示されています。

朝、カーテンを開けて光を感じる。
昼は外の空気を吸う。
夜はスマホを閉じて、星空を見上げる。

そんな小さな習慣が、私たちを自然と調和させてくれます。

「てぃーだ時間」が教えてくれたこと

沖縄で暮らしていると、
「時間を支配する」のではなく「時間と寄り添う」感覚が育まれます。

てぃーだ時間とは、
ただのスローライフではなく、
“自分と世界を調和させる生き方”

それは、教育にも仕事にもつながる考え方です。
焦らずに育てる。
急がずに考える。
時間をかけることを恐れない。

その先にこそ、
本当の学びと創造が生まれていくのだと、
私はこの島で教えられました。

おわりに:太陽のリズムで、心を取り戻す

太陽が雲の隙間から顔を出す夕方の浜辺。
ゆっくりと波が寄せては返す音を聞いていると、
「今日もよく頑張ったね」と、
自然が語りかけてくるような気がします。

生き方に正解はありません。
でも、どんなに忙しい日々の中でも、
**“ゆるやかである勇気”**を持てたら、
心はきっと自由になれるはずです。

太陽は、今日もゆっくり昇り、ゆっくり沈んでいく。
私たちもまた、そんなリズムで生きていけたらいい。

まとめ

  • 「てぃーだ時間」とは、自然と調和した“ゆるやかな時間の流れ”
  • 忙しさに追われる現代人こそ、時間との付き合い方を見直すべき
  • 「予定を入れない日」「人を優先する」「太陽のリズムで生きる」を実践してみよう
サルネ

太陽に合わせて生きると、人生も少しずつ明るくなる。